年金大崩壊岩瀬 達哉
講談社 刊
発売日 2003-09
ジャーナリストとして官僚腐敗やメディア問題を中心に執筆活動を続けている著者が、一般国民から見て厚いベールに包まれた年金行政の闇にスポットライトを当て、年金官僚たちの不正と不法を実証的にあぶり出そうと試みた書である。本書は「週刊現代」に2度にわたって連載されたものに加筆・修正をおこなったものである。
著者によると我々が納めた公的年金の掛け金に関して、年金制度発足から累計すると総額で実に9兆4000億円もの年金財源が、運用事業の失敗や年金給付以外の目的支出等で失われてきたという。その原因は端的に言うと複雑な年金制度の壁に阻まれた年金利権の構造的問題から生じているという。
本書では具体的にその年金利権の構造に鋭くメスが入れられている。年金掛け金が無断で流用されている事例、不明瞭な福祉業務の事務費、グリーンピアの不明朗な用地買収、不可解な年金相談業務に対する支出、無駄な年金広報、天下り官僚を養う財団など著者は綿密な資料と取材により年金行政の腐敗を明らかにしている。
これまでの年金行政についての本とは違って、本書では膨大な資料や取材によりわかりにくい年金利権の構造を体系的に数字を使って表すことに成功している。端々の図表や特に巻末資料での年金掛け金の損失についてはただ驚くばかりである。著者が最後にいうように、本書が年金利権の一掃のきっかけになることを望みたい。 (木村昭二)
年金保険料がいかに無駄に使われてきたか 2003-09-12
著者は、「新聞が面白くない理由」「われ万死に値す−ドキュメント竹下登」の著書があるジャーナリストである。
われわれが、銀行や生命保険会社を選ぶ際、各社が提供しているサービスの差異と同時に、各社の信用そのものを重視する。より信頼できる銀行へ、より信頼できる生命保険会社へお金を預ける。 ところが、公的年金の場合、保険料の支払い先を選ぶことが出来ない。厚生労働省1つである。とすれば、公的年金というサービスの運営者である厚生労働省は、国民全てに信頼される組織でなければならないはずである。しかし、現実は、そうはなっていない。 昨今、年金改革の議論が盛んであるが、それは、もっぱら保険料率や給付額といったサービス内容に関するものが中心であり、厚生労働省ち?いかに運営者として信頼を得るかといった視点は忘れられがちである。こうした観点にたてば、相当の労力と時間を要して取材されたであろう本書の事実の数々は、今後の反省材料として極めて貴重である。われわれの払った保険料が無駄なリゾート施設建設などいかに杜撰に使われてきたか、それがいかに国民をないがしろにしてきたものかが本書を通じてよく分かる。 本書に注文もある。それは、本書全体が「批判」に終始していると感じられることである。ジャーナリストである以上、批判は仕方がないかもしれないし、記者クラブべったりの記者よりもよほどいいとも思う。しかし、本書のタイトルのように年金が崩壊することがあってはやはりならない。広く読まれるであろう本書には、本書も紹介しているような「塊??ある官僚」がいることに期待を見出し、前向きに改革していく視点も欲しかった。
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